★「ブラックスター」

 

デビットボウイである。

★と書いて、ブラックスターと読むそうである。

このアルバムが発売された数日後に彼は亡くなる。

これは、デビットボウイの自分自身へのレクイエムである。

死期が近いことを百も承知で制作されたアルバム。

ブラックスターのスターはロックスターの自分自身。
ブラックの意味は喪に服す色としての黒。

完全に死を前提にした作品である。

しかし、その音世界は死そのものを表現しようとしているわけでなく、死への諦めでもなく、人生の総括でもない。

自分の魂がこれからも続いていくということが自分には伝わってくる。

3曲目の”ラザルス”

「見上げてほしい天にいる俺を」
「俺は自由になるだろうあの青い鳥のように」

このように歌われている。

最後の曲は「私はすべてを与えることができない」というリフレインで終わっていく。

このような形で遺言を残した音楽家もそうはいないと思う。

このアルバムのすべてが「死」に支配されている。

そのように感じる。

しかし、音世界は深淵でむしろ光がある。

最後の曲はまったくこの様にしか聞こえない。

”天国への階段”

それは、雲の上に上っていく、ずっとずっと高く昇っていく。

光あふれた世界へ。

そのようにしか聴こえない。

涙が出てきて、もう、しばらく聴けない。

彼の死によって人類が失ったものは、大きい。

イマジナリーデイ

イマジナリーデイ

 

パットメセニーである。

パッとしないメセニーではない。

パットメヤニーでもない。

パットメセニーである。

メセニーはジャズギタリストであると言い張る友人がいる。

フュージョンとは言ってほしくないそうである。

気持ちはわかる。

でも、これ、ジャズか??

はあ?

ジャズとは言えないであろう。

ジャズっぽくさえもないだろう。

しかし、メセニーはジャズギタリストである。

そんな、音楽である。

ところが、そんなのんきなことは言ってられない音楽である。

こんなにぶっ壊れた音楽って他にあるの?

超絶音世界。

タイトルナンバーの”イマジナリーデイ”。

一曲目から大変な騒ぎである。

一体どうやったらこんな音楽を構築できるんだ!

まさに人間の音楽想像力の極限である。

これをジャズと言われても、アグレッシブすぎてフュージョンでさえ無い。

現代音楽的と言えなくもないが、しっかり小難しい理論で構築されているわけじゃない。

あくまで自由な音楽だ。

十分にポップな精神であるといえる。

二曲目なんて完全にポップですから。

でも、CDの帯には”ジャズ/フュージョン”と書いてある。

もうね、ジャンル分けっていうのは意味がないんだ。

あくまで、どの棚に並べるかの目安でしかない。

演歌でないのは確かだから。

棚わけ分類項目ということでよろしいでしょうか。

大体さー、

このアルバムの7曲目。

”The Roots of Coincidence”

これを、メセニーはライナーノートの中で「完全にロックになったよね」などとのたまっている。

それ、もうロックじゃん!

ロックだと思うよ。そうしか聞こえないもんね。

ジャズミュージシャンが作り出したロック。

それでいいよね。

ケルンコンサート

ケルンコンサート

 

キースジャレットである。

どうも世間一般ではキースと言ったらコレのようである。

初めてのキースはこれだった。

感想は一つしかない。

「なんと言う音!」

これはピアノの音なのか??

とにかく、こんな音は聞いたことがなかった。

いや、今でもない。

キースの音はキースの音としてこういう音色であると言える。

でも、これほど澄んだ輝かしい音はほかに聞いたことがない。

ライブにも何回も足を運んでいるが、この時の録音、この音はこれだけのように感じる。

その音は、「天上から降り注ぐ」と言っていいだろう。

天井ではない。

天丼でもない。

”天上” である。

雲の上の天国から降り注ぐという意味である。

この音、ラジカセで聞いてもわかると思うんだけどなあ。

この、音そのものについて語っている評論もコメントも読んだことがない。

何故だ。

みんな、聞こえてないのか、この音が?

信じたくない。

これはアマゾンのジャズオールタイムベスト10に入っていいたと思ったが。

ということは、つまりその音が皆に聴こえているからと信じたい。

優秀録音だからとかそんなんじゃなく、キースの音色だ。

”天国からの音”が聞きたくなったらこの一枚しかない。

タコにイカが出来る程聴いた2枚のCDのうちの一枚である。

このピアノは、コンサートグランドが手違いで届かず、会場の隅にあった壊れた小さなピアノだったそうだ。

キース、頼む。

あと100年生きてくれ。

本当に、お願いだ。