カインド・オブ・ブルー

カインド・オブ・ブルー

 

このレコードは、

人類の音楽遺産という位置づけである。

・・・だって、自分で言ってるんじゃないんだもん。

何年前か忘れたが、あるCDの雑誌でクラシック、ポップ、ロック、ジャズでのオールタイムベストを選出する企画があった。

そのジャズ部門で、4人の評論家のうち3人がオールタイムベストとして「カインド・オブ・ブルー」を選んでいた。

はっきりと「人類の音楽遺産」とされていた。

実際、今でも世界で一番売れているジャズのCDだそうである。

一体、著作権料はどこに行っているのであろうか。

もう、50年過ぎているから、レコード会社が総取りなのか?

下世話な話になってしまったが、人類の音楽遺産で異論は無い。

このアルバム、全曲最高なのは言うまでもないが、一番素晴らしい曲は、なんといっても三曲目の「ブルー・イン・グリーン」でる。

マイルスデイビス作曲のこの曲こそ、ジャズの全てと言っても過言ではない曲となろう。

さすがのマイルスである。

しかーし。

この曲は実際にはエバンスの作であると後年ずっと問題にされ続けた作である。

エバンス自身も認めているようで、エバンス作なのは間違いないというのが歴史歴認識である。

この、人類の音楽遺産の中での最高の曲はビルエバンスの物であるという事実を忘れてはならない。

この三曲目「ブルー・イン・グリーン」の音世界の全てを支配しているのはエバンスの奏でる和音である。

この、妖しい響き。

モーツアルトの「レクイエム」のような響きである。

そう感じる。

この演奏はDドリアンという調性(よくわかりません)らしい。

モーツアルトのレクイエムはDマイナーである。

モーツアルトは名作と呼ばれるようになる楽曲で、ここぞとばかりにDマイナーの調整を用いたという話を聞いたことがある。

エバンスも然り、なのか。

(よくわかりません)

ワルツ・フォー・デビイ

ワルツ・フォー・デビイ

 

ビルエバンスである。

ジャズ史上の、名盤中の名盤中の名盤中の名盤である。

もう、10年も前のことになるが、ニュース番組の取材のコーナーで、横浜で何十年も続いたジャズ喫茶(BAR?)が本日閉店するというその模様を追った映像が紹介されていた。

今日のためにオールドファンが全国から何十人も集まってきて、別れを惜しんだというその日。

店主が、「みなさん、それではこれが最後の曲です!今まで長い間ありがとうございました!」
「それでは、最後の曲、かけます!」と、泣きの涙で叫んだ後にスピーカーから出た音は、このアルバムの一曲目の”マイ・フーリッシュ・ハート”であった。

このエピソードが、このアルバムの価値を十二分に物語っている。

ジャズ喫茶の経営者といえば、”その人の人生そのものがジャズ”と言って差し支えないだろう。

その人が人生の最後の舞台でかける曲は、その人にとって最高の物、一番愛している物で無い筈がない。

このエバンストリオの名演はある意味、”ジャズの全て”であると言って差し支えないはずと思う。

少なくともその店主にとっては。

しかし、あまねく人間世界にとっても同じことと思う。

このトリオが奏でる音。

詩的音楽世界。

ジャズのクールな要素の根底に根差すリリシズム。

このアルバムの一曲目、最初の一音が出た瞬間に表出される音宇宙。

一瞬に瞬きながら、永遠であるもの。

永遠を紡ぎながら、一瞬でありうるもの。

色即是空とはこのことか。

(よくわかりません)