★「ブラックスター」
デビットボウイである。
★と書いて、ブラックスターと読むそうである。
このアルバムが発売された数日後に彼は亡くなる。
これは、デビットボウイの自分自身へのレクイエムである。
死期が近いことを百も承知で制作されたアルバム。
ブラックスターのスターはロックスターの自分自身。
ブラックの意味は喪に服す色としての黒。
完全に死を前提にした作品である。
しかし、その音世界は死そのものを表現しようとしているわけでなく、死への諦めでもなく、人生の総括でもない。
自分の魂がこれからも続いていくということが自分には伝わってくる。
3曲目の”ラザルス”
「見上げてほしい天にいる俺を」
「俺は自由になるだろうあの青い鳥のように」
このように歌われている。
最後の曲は「私はすべてを与えることができない」というリフレインで終わっていく。
このような形で遺言を残した音楽家もそうはいないと思う。
このアルバムのすべてが「死」に支配されている。
そのように感じる。
しかし、音世界は深淵でむしろ光がある。
最後の曲はまったくこの様にしか聞こえない。
”天国への階段”
それは、雲の上に上っていく、ずっとずっと高く昇っていく。
光あふれた世界へ。
そのようにしか聴こえない。
涙が出てきて、もう、しばらく聴けない。
彼の死によって人類が失ったものは、大きい。